昨日に続いてドナルド=ワンドレイの短編である。"The Painted Mirror"という題名で、初出はエスクァイア誌の1937年5月号。現在はエスクァイアの公式サイトで無償公開されている。
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当時の誌面が再現されている。いきなり女性の脚が目に飛びこんでくるが、これはワンドレイの小説の挿絵ではないということをお断りしておこう。
普段は鍵のかかっている部屋で少年ニコラスが見つけたのは、真っ黒な塗料を一面に塗られた鏡だった。ニコラスが鏨を使って塗料を削り取ると、鏡に映し出されていたのは彼のいる部屋ではなく異界の光景だった。夢中になったニコラスは塗料をすべて削り落とす。鏡の中には美少女の人形がおり、何かから逃れようとするかのようにニコラスのほうへ駆けてくるところだった。ニコラスが鏡に触れると、彼と人形の魂が入れ替わってしまう。ニコラスの身体を乗っ取ったものは邪悪な笑みを顔に浮かべながら塗料を鏡に塗りたくり、少年は闇の中に閉じこめられてしまうのだった。
鏡の中に人間が閉じこめられるというのはラヴクラフト&ホワイトヘッドの「罠」と同工異曲だが、こちらは結構おっかない結末だ。ロッド=サーリングが司会を務めた「四次元への招待」の第2期で映像化されているそうだが、私は観たことがない。
Night Gallery story “The Painted Mirror” is reviewed here | Written by David Juhl
上記のブログで紹介されている粗筋を読む限り、テレビドラマの内容は原作とはだいぶ異なっていたようだ。鏡の中に異界があるという基本的なモチーフと、鏡に塗料を塗って中に人間を閉じこめるという結末が共通している程度だろう。
Don't Dream: The Collected Horror and Fantasy of Donald Wandrei
- 作者:Wandrei, Donald
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: ペーパーバック