セトの指輪はクトゥルー神話の宝具として割と有名だが、それに比べると「ソロモンの杖」はあまり名前が広まっていないようだ。こちらもロバート=E=ハワードが創造したのだが、ソロモン=ケインの物語でしか見かけたことがない。知名度が低いというより、クトゥルー神話大系の宝具として認識されていないように思われる。
ソロモンの杖という名前の由来は賢王ソロモン。この杖をかつてソロモン王が所持していたからだが、そもそもはアトランティス文明の遺宝であったという。「死霊の丘」で大呪術師ンロンガからケインが受け取ったのだが、その真価が発揮されるのは未訳の"The Footfalls Within"である。ウィアードテイルズの1931年9月号に掲載された短編で、この作品を読んで大いに刺激を受けたとラヴクラフトは1931年8月6日付のハワード宛書簡で語っている。
ロバート=ブロックの「星から訪れたもの」を連想させる不定形の妖魔が"The Footfalls Within"には登場する。尋常の武器が通用しない敵だったが、ケインはソロモンの杖を使って瞬殺した。尖った先端で突き刺したのだろうと思うのだが、「ケインは杖を振り上げ、渾身の力で一撃した」としかハワードは述べていないので、もしかしたら斬撃だったのかもしれない。仮面ライダーBLACK RXが使うリボルケインのようなものだろうか。
異界から来る敵を問答無用で殺してしまうという非常に強力な武器なのだが、その後ソロモンの杖をケイン以外の者が使ったという話が伝わっていないのには理由があるように思われる。おそらく、まず杖を敵にヒットさせなければ効果が発動しないのだろうが、ケインのように化物と立ち回りを繰り広げられる人間はめったにいないので、どこかで宝の持ち腐れになっているのだろう。
してみると、ソロモン王が宝杖を使いこなしていたというのは結構すごい話だ。きっと彼は杖術の天才的な使い手で、杖を振り回してベリアルやアスタロトと渡り合ったに違いない。
The Savage Tales of Solomon Kane
- 作者: Robert E. Howard
- 出版社/メーカー: Del Rey
- 発売日: 2004/06/29
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