ウィアードテイルズの1932年5月号にはロバート=E=ハワードの「墓からの悪魔」が載っているが、この作品に対するハワード自身の評価は必ずしも高くなかった。1932年4月に書いたラヴクラフト宛の手紙でハワードは次のように述べている。
僕の故郷に怪奇譚の雰囲気を帯びさせ、写実的な舞台を背景にして際立たせようと試みているところです。ウィアードテイルズの今月号に載っている「墓からの悪魔」は、その種の拙い試みでした。
「墓からの悪魔」を読んだラヴクラフトは5月7日付の手紙で返事をした。
WT誌の先月号に載った「墓からの悪魔」のことは殊に讃えねばなりますまい。これは傑作であり、通俗誌ではなかなか得られない真正の戦慄を私に味わわせてくれました。その緊迫感と雰囲気は見事なものです――陰鬱なる納骨堂の帳が全編を通じて垂れこめているかのようです。それとスミスの「ヨー=ヴォムビスの地下墓地」が先月号の白眉です。
C.A.スミスを超える怪奇作家はラヴクラフトしかいないとハワードは語ったことがあるが、尊敬するスミスの作品と自分の作品を並べてもらったことは彼にとって感激だったのだろう。1932年5月24日頃にハワードが書いたラヴクラフト宛の手紙からは、ラヴクラフトの暖かな言葉を嬉しく思う気持ちが伝わってくる。
「闇の種族」と「墓からの悪魔」をお褒めいただき、ありがとうございます。「墓からの悪魔」についての御高評にはとりわけ力づけられます。あの作品はベイツに突っ返されてしまいましたし、あまり感心してくれない知り合いもいたものですから、完全な失敗作に違いないと思っていました。でもラヴクラフトさんの言葉を読んでいると、また自信が湧いてきます。クックさんとマンさんにも、心からありがとうと伝えておいてください。
その翌年、ラヴクラフトの作品集をパトナム社から刊行するという計画が頓挫した。落胆しているラヴクラフトを今度はスミスが激励し、あなたの作品は50年後もきっと残ると熱い口調で語っている(参照)。友達というのは、いいものだ。
- 作者: 仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 1997/02
- メディア: 単行本
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