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主にクトゥルー神話のことなど。

巨人の復活

 ブライアン=マクノートン(1935〜2004)に"The Return of the Colossus"というクトゥルー神話作品がある。1996年に発表された短編で、C.A.スミスの「イルーニュの巨人」の続編という位置づけだ。
 魔術師ナテールが人間の屍から巨人を作り上げて世の中に災いをもたらそうとするが、ガスパール=デュ=ノールに阻まれて滅ぶ――というのが「イルーニュの巨人」の物語だが、マクノートンによる続編は第一次世界大戦たけなわの1916年を舞台にしている。アヴェロワーニュに進駐した英軍の部隊が巨人を発見して復活させ、戦場で利用しようと目論むが、巨人はドイツ軍の砲弾で粉々になってしまった。黒魔術の産物も近代兵器にはかなわなかったようだ。泥濘と化した戦場には、巨人の部品として使われていた死体と英軍の兵士たちがともに散乱していた。どれが新しい死体で、どれが古い死体なのかは定かでなかった――とマクノートンは物語を締めくくっているが、この皮肉のきつさは確かにスミスを彷彿とさせる。

Even More Nasty Stories

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 どちらかといえば単純な話だが、「マクノートン氏の努力の成果は鮮やかにも独創的であり、スミスもきっと嘉してくれることだろう」とマット=カーペンターは高く評価している。ついでにいえば、20世紀のアヴェロワーニュを扱ったクトゥルー神話作品はかなり珍しい。他の例として私がすぐに思いつくのは、ラヴクラフト&ヒールドの「永劫より」に「フォースフラム城の地下室で発見された複数の遺体」への言及があることくらいだ。もしもクトゥルー神話年表というものを作るとしたら、巨人の復活に関するマクノートンの設定は付け加えておきたい。
 作者のマクノートンは米国の人。短編集The Throne of Bones で1998年度の世界幻想文学大賞を受賞している。彼の作品で邦訳されているものとしては『ラヴクラフトの遺産』(東京創元社)所収の「食屍姫メリフィリア」があり、これはお読みになった方もおられることだろう。