新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

怪談・夜鷹の呪い

 ロバート=E=ハワードが1930年12月頃に書いたラヴクラフト宛の手紙より。

僕の祖父であるアーヴィン大佐がかつて所有していた広大な地所は、いまではダラスの一部として繁栄しています。夜鷹さえいなければ、彼も町と一緒に富み栄えていったのかもしれません。夜鷹がひっきりなしに鳴き立てるものですから、祖父は気も狂わんばかりでした。彼は動物や鳥には優しく、動物よりも人間を殺すときの方が良心の呵責を覚えないという人だったのですが、ある晩に怒り狂って夜鷹を3羽撃ち殺してしまったのです。夜鷹を殺めてはならないという因習があり、祖父はすぐに後悔したのですが、取り返しはつきませんでした。伝説によると、夜鷹を殺めた場合は人命で購わなければならないのですね。たちまち大佐の家族は命を落としはじめました。黒人の年寄りたちが予言したとおり、1年に1人ずつです。祖父は5年間がんばり、自分の大家族のものが5人亡くなるに及んで根負けしました。祖父のことを臆病者呼ばわりした人間など未だかつておりませんでした。フィル=シェリダンの騎兵隊の哨兵線を単身突破した人なのですから。でも夜鷹にはかないませんでした。祖父はダラスの土地を二束三文で手放し、西部に引っ越して羊の牧場を買いました。

 ハワードがラヴクラフトに怪談話をしている。シェリダンというのは北軍の将軍として有名な人で、その部隊と戦ったハワードの祖父は南軍に従軍していたわけだ。彼が北軍に捕えられたとき、銃殺される直前に脱出したという武勇伝もあるらしい。ミズーリ州エクスターのメープルウッド墓地に埋葬されており、墓碑をネットで見ることもできる。
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