新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

三冠王

 ロバート=E=ハワードが1934年7月頃に書いたラヴクラフト宛の手紙。ホフマン=プライスが遊びに来たことを報告している。

プライスが来てくれて、たいへん楽しかったことはすでにお知らせしたとおりです。彼がもっと長く滞在できなかったことだけが心残りでなりません。何週間かいてくれたら、テキサス州をいくらか見物させてあげることもできたのですが。彼はとても話上手でした。僕は彼と何時間もぶっ通しでお喋りをしたのです。彼のフェンシング談義には非常に興味を惹かれました。剣を交えるにふさわしい相手に対して彼が技量を発揮するところを見てみたいものです。僕もフェンシングを習いたいと以前は思ったものですが、その機会にはついぞ恵まれませんでした。西テキサスにはフェンシングの達人はあまりいないのです。何年か前、ある友人と僕は独学でフェンシングを覚えようとしたのですが、フルーレを手に入れることができなかったので軍刀を使いました。不運にも僕は最初の対戦で彼の右手を刺してしまい、その後二度と彼はフェンシングの相手をしてくれませんでした。もっとも、フェンシングがボクシングほどの僕の興味を惹いたことが一度でもあったかは疑問です。フェンシングは技巧を基に成り立っており、肉体を鍛えて腕力を得るのには向いていないようだからです。

 ラヴクラフトは7月28日付の手紙で返事をした。

プライスの訪問は嬉しい出来事だったに違いありません。あれほど多芸な人間には会ったことがありません――アラビア語や数学や東洋の絨毯などの話を彼にさせても、フェンシングの話と同じようにおもしろかったはずです……どの話題も内容が豊かで学術的なのです。
(中略)
ところで、プライスの最近の葉書に書いてあった計画が引き続き実行に移されているのであれば、いま彼はクラーク=アシュトン=スミスを再訪しているはずです。彼はまことに我々一派の連結点となっておりまして――私が思うに、ハワード君やアヴェロワーニュの代官殿のいずれかと対面したことのある怪奇作家は彼だけなのです。

 ラヴクラフト・スミス・ハワードの3人全員と顔を合わせたことがあるのはホフマン=プライスくらいだろうという話だ。ロードアイランド・カリフォルニア・テキサスをすべて訪問するのはいかにも大変そうだが、プライスには三冠王の称号でも進呈したいところである。