新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

教会の庭のイチイ

 ダーレスに"The Churchyard Yew"という短編がある。
 寺男のチャーリー=スプロールとハーカー牧師の仲がなぜ悪いのかといえば、教会の庭に植わっているイチイの木が原因だった。ハーカー牧師の前任者の時代にスプロールが植え、手塩にかけて育ててきた木だが、ハーカー牧師はその位置が気に入らなかったのだ。植え替えろというハーカー牧師、頑として聞き入れないスプロール。
 ある晩、泥酔したスプロールは居酒屋から自宅に帰ろうとして墓地を通りかかり、掘ったばかりの墓穴に転落して首の骨を折った。エイムズという男が新たに寺男として雇われ、ハーカー牧師はすかさずイチイの木を植え替えさせる。その時から牧師は夜な夜なスプロールの幽霊に悩まされることになった。
 しまいにハーカー牧師はスプロールの祟りで命を落とす羽目になる。エイムズが駆けつけると、いつの間にかイチイの木は元の場所に戻っていた。牧師さんの死んだ夜、俺が居酒屋から帰ろうとしたら、スプロールのやつが教会の庭でせっせと穴を掘っているのに出くわしたんだよとトム=マーリー爺さんは言い張るのだった……。
 "The Churchyard Yew"の初出はウィアードテイルズの1947年7月号で、当時はJ=シェリダン=レファニュの未発表作品という触れこみだった。このいたずらを見破ったものが誰もいないところを見ると、自分には贋作の才能があるようだとダーレスは知人に語ったそうだ。
 ところでダーレスといえば、ウィリアム=ホープ=ホジスンの「妖豚」は彼による偽作なのではないかと取り沙汰されたことがあった。
Sigsand Manuscript The Hog・・・1
Sigsand Manuscript The Hog・・・2
Sigsand Manuscript The Hog・・・3
 ホジスンその人が作成したタイプ原稿を見たダグラス=A=アンダーソンによると、「妖豚」はホジスンの作品と言い切ってしまっていいらしい。
Google グループ
 とりあえず疑いは晴れたわけだが、"The Churchyard Yew"の一件を鑑みるに、疑われるだけのことをダーレスがしていたのは否めなさそうだ。