新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

墓地を歩むもの

 橋本輝幸氏(id:granit)のTwitterから。


 ワトスンが2010年に書いたクトゥルーものというと、Cthulhu's Reign に収録されている"The Walker in the Cemetery"のことか。これはイタリアのジェノヴァを舞台にしており、スタリエーノ墓地で団体客が観光旅行を楽しんでいる最中にいきなりクトゥルーが復活するという内容の短編だ。
 どうやらクトゥルーの分身が世界中を徘徊しているらしく、スタリエーノ墓地にも小型の分身が出現する。そいつは観光客たちを墓地に閉じこめ、飢え死にしてしまわないよう適当に食糧を与えながら、気が向くと一人ずつ捕えて惨殺するのだった。一体クトゥルーの意図は何なのか、スタリエーノ墓地の外はどうなってしまったのかは最初から最後まで不明のままで、何だか陰惨な喜劇を見ているような気分になる話だ。ちなみに、主役のお姉さんが触手に陵辱される場面もある。
 Cthulhu's Reign DAWブックスから刊行されたアンソロジーで、旧支配者復活後の世界をテーマにしている。日本から朝松健氏が参加しているほか、フレッド=チャペルやリチャード=A=ルポフといった馴染み深い顔ぶれの作品が読める。値段も手頃なので、お薦めだ。
Cthulhu's Reign

Cthulhu's Reign

  • 発売日: 2010/04/06
  • メディア: マスマーケット