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ダーレスは敬虔なクリスチャンか

 ラヴクラフト無神論者だったことと、ダーレスがカトリックだったことは対比されがちである。だが、果たしてダーレスの信仰はどの程度まで篤いものだったのだろうか。

ならいつもクリスチャンの考え方を罵倒し今の世の中リベラルが主流であると論じていた貴方は、敬虔なクリスチャンのダーレスを罵倒しているのと同じではないですか?と言い返したくも成った。

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 まず、何をもって敬虔と見なすのかという問題がある。ダーレスはラヴクラフトと同様に離婚を経験しており、必ずしもカトリックの教義に忠実ではなかった。初期の代表作であるEvening in Spring では「地獄はカトリックで一杯だ。地獄を発明したのはカトリックだから、優先権があるのだ」などと辛辣なセリフを吐き、信仰心に凝り固まった人間を風刺するキャラクターとしてメイおばを登場させている。
 なお、ダーレスはカトリックであると同時に剛毅なリベラリストでもあり、赤狩りの嵐が吹き荒れる中で公然とジョゼフ=マッカーシーを批判していた。彼はマッカーシーを上院から駆逐するべくリコール運動を行い、「我が国にとっては、共産主義者などよりもマッカーシーの方がよほど重大な敵だ。共産主義者のすることは高が知れているが、マッカーシーの如き輩がこの国に撒き散らす不信と不和の種は計り知れない」と述べている。マッカーシーの支持者たちはダーレスのことを憎み、彼に見立てたロバを引き回したという。
 もちろんダーレスは最後まで信仰を捨てず、教皇ヨハネ23世から祝福を授かったこともある。キリスト教徒であることと、リベラルであることは両立するのだという事実を体現した人物の一人といえるだろう。

Evening in Spring

Evening in Spring