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主にクトゥルー神話のことなど。

グラーキの刺

 id:SerpentiNagaさんがいっているのはこれのことだろう。『エンサイクロペディア・クトゥルフ』はよい本なのだが、他にも以下のような例がある。

グラーキの刺に似た合成ミイラが多数発見されているので、グラーキがもっとあとになってから、タグ・クラトゥアの逆角度を使用するエジプトの神官によって地球に招来されたと主張する者もいる。
『エンサイクロペディア・クトゥルフ』102ページ

「グラーキの刺に似た合成ミイラ」とは何のことだろうか。うしとらさんから借りたままになっている原書(第2版)で確認してみる。

Some insist that Glaaki had come to earth before for a short time through the priests of Egypt's use of the Reversed Angles of Tagh Clatur, as a number of hybrid mummies have been discovered with spines like Glaaki's nearby.

 私が訳すとすれば「グラーキの刺に似た刺と共に多数の合成ミイラが発見されているので、エジプトの神官たちがタグ=クラトゥアの逆角度を使用したことによってグラーキは以前にもしばらく地球に到来していたと主張する者もいる」といったところか。「刺に似た合成ミイラ」よりも「もっとあとになってから」の方が誤訳としては深刻だ。
 なお、ここではミイラの近くに刺があったことになっているが、そもそもの典拠であるラムジー=キャンベルの小説"The Inhabitant of the Lake"では次のように書かれている。

On the other hand, the book does mention 'heretics' who insist that the spines can be found buried in certain hybrid Egyptian mummies, and say that Glaaki came before - through 'the reversed angles of Tagh-Clatur' which the priests of Sebek and Karnak knew.

 つまり、刺はミイラの体に埋めこまれているのである。エルダーサインズ=プレスから刊行された第3版では、よりキャンベルの小説に沿った記述に変えられている。

エンサイクロペディア・クトゥルフ

エンサイクロペディア・クトゥルフ

The Cthulhu Mythos Encyclopedia

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