ジョン=タインズといえばゲーム界およびクトゥルー界の大物だが、彼はとにかくハスターのことが好きらしく、映画『黄の印』の脚本を担当したほどだ。またDelta Green: Countdown でもハスターのためにわざわざ一章を割き、その章の冒頭でハスターの本質について語っている。なかなか大胆かつ独特な解釈なので、紹介しておく価値があるだろう。
ハスターは──クトゥルー神話TRPGでは旧支配者に分類されているが──本来は人格神ではないし、いかなる種類の知的生命体でもない。むしろハスターはエントロピーの力なのである。それは、秩序を破壊する宇宙的な原理である。原子から宇宙に至るまで一切の水準でこの秩序の破壊が発生するので、ハスターという『神性』は現実のあらゆる水準に影響を及ぼしていることになる。この影響の結果は、教団がハスターを神として崇拝することから、現実に対する人間の認識が根本的なところで侵食されることにまで及んでいる。本書ではハスターの能力値を設定しない。ハスターには真の位格がないので、ハスターと出会う方法は存在しないのである。しかし人間の脳髄に可能な範囲内でハスターを理解することはできる。それは宇宙の根源的な力であり、人類によって引き起こされた崩壊への反応としてのみ個々の役割を果たす──我々の破壊がそれに形を与え、我々の暴力がそれに名前を与え、我々の叫喚がそれに声を与えるのだ。いかに大勢の人間がそれを崇拝し、それに意識と知性があると見なしていようと、それが神でないのは重力が神でないのと同様である。しかしながら、エントロピーの法則と同調する特性を備えた『神格』を想定することにより、この原理と直接的な方法で交流することが人間にも可能になる。かくして、ほとんどの人間が抱いているのよりも──狂ったものではあるにせよ──偉大な理解が得られるのだ。
ハスターを四大首領の一柱とするダーレスの説とは明らかに違うが、神々を「外なる神」と「旧支配者」に分けてハスターを後者とするCoC従来の解釈とも異なる。タインズの説におけるハスターはヨグ=ソトースに近い存在といってよいだろう。リン=カーターによるとハスターはヨグ=ソトースの息子だそうなので、父親に似たということか。
- 作者: Dennis Detwiller,Adam S. Glancy,John Tynes
- 出版社/メーカー: Pagan Publishing
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: ペーパーバック
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