新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ダーレス 鷹と……鳩

 昨日の記事で紹介したドロシー=M=グローブ=リタースキーのダーレス伝は日本のアマゾンでは取扱がないが、米アマゾンにはレビューも掲載されている。

 今のところ、オーガスト=ダーレスの伝記は本書しかない。本書を読んだばかりに憤激し、危うく卒中を起こしそうになったクトゥルー神話研究家もいるそうだが、私自身はその問題ではさほど心が動かない。
 ベトナム戦争や冷戦における政治的なタカ派ハト派とは、本書の題名は何ら関係がない。誤植は多いし、文章はまずいし、語り口も常になめらかなわけではない。それにもかかわらず私は本書を読み通したし、楽しんだ。ダーレスは興味深い人物であり、私が未だかつて聞いたこともなかった資料をリタースキー女史はふんだんに活用している──そして文筆家としての彼女にどんな欠点があるにせよ、彼女が情熱をもって本書の執筆に取り組んだことは明白なのだ。

http://www.amazon.com/dp/0881000930

 評価は星四つとなっているが、なかなか的を射ているように思われる。ロバート=ブロックをRobert Blockと綴るのは勘弁してほしいし、著者の憶測を交えた箇所も多いのだが、私にとっては買って損のない本だった。また、必ずしもダーレスを礼賛した本ではない。むしろ、人間くさい素顔のダーレスを知ることのできる本というべきだろう。