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ピックマンのモデム

 id:asahi-arkhamさんのTwitterから。

 "Pickman's Modem"というのは、ローレンス=ワット=エヴァンズが1992年に発表した短編で、先日の記事で紹介したCthulhu 2000 に収録されている。その粗筋は以下の通りだ。
 語り手とヘンリー=ピックマンはよくオンラインで会話を楽しむ仲である。ある日、しばらくネット上に姿を見せなかったピックマンがひょっこり現れ、使っていたモデムが故障したので買い換えたところだと報告するが、その次の日から奇妙なことが起こるようになった。ろくに綴りも知らないはずのピックマンはたいそう文章が流麗になり、ちょっとした発言にも長々とレスをつけてくるようになった。
 ピックマンの巻き起こすフレームにうんざりした語り手は彼をじかに訪問して諫めようとするが、そんな発言をした覚えはないとピックマンは言い張る。ピックマンが発言のログを語り手に見せると、それは語り手の受信したメッセージと大意こそ同じだったが、ずっと簡潔で砕けたピックマン本来の文章だった。まるで誰かがピックマンの文章を書き直しているかのようだったが、買い換えたモデムに原因があるのではないかと語り手は推測する。モデルの製造元はミスカトニック=データシステムズという聞いたこともない会社だった。さらにモデムを買い換えるだけの余裕のないピックマンは今のモデムをそのまま使い続けることにし、小説を書いてメールで出版社に送ることを考えつくが……。
 黎明期のインターネットを舞台にした非常に短い作品で、外付けのモデムが使われている点が時代を感じさせる。題名はもちろん「ピックマンのモデル」のパロディなのだが、内容はほとんど関係がない。ラヴクラフトがインターネットを利用していたらどうなったかと考えてみたことから話の着想を得たのだろうか。
Cthulhu 2000: Stories

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