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主にクトゥルー神話のことなど。

ダーレス賞制定の理由

英国幻想文学協会は、シャーロキアンとしてのダーレスの功績を記念して、彼の死の翌年である1972年にオーガスト・ダーレス賞を制定した。
wikipedia:オーガスト・ダーレス

 ウィキペディアに何が書いてあっても驚かないが、これはひどい。ダーレスといえばソーラー=ポンズとクトゥルー神話しか知らない人が書いたのだろうか。英国幻想文学協会がオーガスト=ダーレス賞を制定した理由は、Return to Derleth に収録されているマイク=アシュリーのエッセイ"Hands Across the Ocean"が次のように言い尽くしている。

私たちが見てきたのは編集者ダーレス、出版者ダーレス、代理人ダーレス、批評家ダーレス、救済者ダーレス、師父ダーレス……私たちはこれらをすべて見てきたが、彼という人間はさらにずっと巨きな存在なのだ。ダーレスは遙かに広範な文学界に倦まず献身した男なのだが、幻想文学への関心を彼と分かち合う人間がいれば、その人間のために必要なだけ時間を割いてやるのだった。老いも若きも、新進も古強者も、多くの英国の作家をダーレスはその翼の下に守ってやった。もしもダーレスがいなければ、H.R.ウェイクフィールドのような老巧や、ラムジー=キャンベルのような俊英の作品を引き受ける出版者はいなかっただろう。そして幻想文学界は遙かに貧弱なものとなっていたに違いない。ダーレスは驚異的な遺産を残してくれた。そして幻想文学界は、とりわけ英国においては、報いることができないほど大きな恩を彼に負っているのだ。

 オーガスト=ダーレス賞は、英米の怪奇・幻想文学界に対するダーレスの絶大な功績を讃えるものに他ならない。

Return to Derleth Selected Essays

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