新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ラヴクラフトとナチス

 オクラホマ州立大学名誉教授のハリー=ブロブストは若い頃プロヴィデンスに住んでおり、ラヴクラフトと親しかった。ブロブストは次のように回想している。*1

シェパード夫人という人がプロヴィデンスの学校でドイツ語を教えておりましてね──彼女はカレッジ街66番地の家の1階に、ラヴクラフトと叔母さんは2階に住んでいたんです──彼女は仕事を引退すると、移住するつもりでドイツに渡りました。ところが当時はナチスが政権を掌握しつつある時期で、ユダヤ人が迫害されているのをシェパート夫人は目の当たりにしたんです。彼女は恐れおののいてドイツを去り、プロヴィデンスに引き返しました。そしてギャムウェル夫人とラヴクラフトに自分の体験を物語りました。ユダヤ人がそんな風に虐げられていることを知って、二人ともたいそう腹を立てていましたよ。ラヴクラフトには耐えがたかったんだと心底から思いますね。

 ラヴクラフトナチス批判に転じる決定的な理由になったとされる出来事である。心が優しく想像力が豊かなラヴクラフトは、罪もなく傷つけられている人々がいることに耐えられなかったのだろう。