昨日の話の続き。
ヘンリー=アーミティッジ博士はミスカトニック大学図書館の館長だったのだろうか、それとも単なる司書だったのだろうか? アーミティッジ博士は教授なのかという問題に比べると、こちらは少々ややこしい。教授問題は「ラヴクラフトはアーミティッジ博士を教授とは呼んでいない」という結論が出ているが、館長問題の方はラヴクラフトその人の見解が定かでないからである。「ダニッチの怪」ではアーミティッジ博士を"librarian"としているが、これは「館長」なのか「司書」なのか定かでない。ダーレスは後者の立場で、彼の「ハスターの帰還」によると1928年当時のミスカトニック大学図書館の館長はランファー博士である。そして『暗黒の儀式』によるとランファー博士の前任者はハーパー博士なので、ダーレス説に従えばアーミティッジ博士が館長だったことはない。
ダーレスはミスカトニック大学図書館の館長を"Director"と呼んでいるが、ブラウン大学図書館の館長はDirectorではなくUniversity Librarianである。ただしダーレスの母校たるウィスコンシン大学マディソン校の附属図書館の館長はDirectorである。おそらくダーレスは自分自身の母校を念頭に置きながらミスカトニック大学を描写したのだろう。
ついでにクトゥルー神話TRPGの設定を見てみる。Miskatonic University ではアーミティッジ博士が館長、ランファー博士が副館長ということになっており、そして館長はDirectorと呼ばれている。つまりダーレスの説を下敷にしつつ、ランファー博士の前任者はハーパー博士ではなくアーミティッジ博士だったという独自の立場を取っているわけである。ダーレスの設定とは異なるが、ラヴクラフト本来の設定でもないという点に注意が必要だろう。
Miskatonic University: A Sourcebook For Call Of Cthulhu (Call of Cthulhu Roleplaying Game)
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