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アーミティッジ博士は教授なのか

 ラヴクラフトの「ダニッチの怪」に登場するヘンリー=アーミティッジ博士を「アーミティッジ教授」と呼んでいる人をしばしば見かけるが、これは正しいのか。というのも、ラヴクラフトの作品においてアーミティッジ博士が「教授」と呼ばれたことは一度もないからである。「ダニッチの怪」の第10章から引用する。

In the end the three men from Arkham―old, white-bearded Dr Armitage, stocky, iron-grey Professor Rice, and lean, youngish Dr Morgan, ascended the mountain alone.

「アーミティッジ博士、ライス教授、モーガン博士」となっていることにお気づきいただけるだろうか? 他の箇所でも常にライスは「教授」、アーミティッジとモーガンは「博士」と呼ばれている。これは実にラヴクラフトらしい点だと思うのだが、彼は教授と単なる博士をきちんと区別しているのだ。したがってアーミティッジ博士は正教授の地位を得ていなかった可能性が高い。
 なお日本の大学では教授が図書館長を務めるのが普通だが、米国の大学ではそうとは限らない。2009年7月1日現在、ミスカトニック大学のモデルとなったブラウン大学の図書館長はハリエット=ヘマシという人だが、この人はブラウン大学の教員ではなく職員である*1。ただし「ダニッチの怪」が書かれた1920年代のブラウン大学がどのような制度だったのかまでは突き止めることができなかった。詳しい方に御教示いただけたら幸いである。