新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

空に埋められて

ジョン=シャーリーに"Buried in the Sky"という中編小説がある。冒頭にラヴクラフト&ヒールドの「蝋人形館の恐怖」からの引用が掲げてあり、読者の期待を裏切らずにヨグ=ソトースが登場する神話作品だ。2003年に執筆され、初出はウィアードテイルズの…

二人のアウトサイダー

ダーレスに宛てた1939年4月21日付の手紙でC.A.スミスが次のように述べている。 ラヴクラフト作品集第1巻の収録内容について提案したいことが一つか二つあります。「奥津城」と「死体安置所にて」のどちらかを収録するのであれば、僕としては「死…

そこにいるのは

ベイジル=コッパーに"Out There"という未訳の短編がある。1999年にフェドガン&ブレマーから刊行されたWhispers in the Nightを初出とする作品で、ジェイムズ=アンビュールにいわせると「シャフト・ナンバー247」の続編だそうだ。*1こちらは邦訳が…

エーリヒ=ツァンの遺産

ブライアン=ステイブルフォードのThe Cthulhu Encryptionを8年前に紹介した*1が、同じくオーギュスト=デュパンを主役とするシリーズで"The Legacy of Erich Zann"という中編がある。題名からわかるようにエーリヒ=ツァンの音楽がモチーフになっており、…

フェイグマンのひげ

ラヴクラフトのためにC.A.スミス宛の手紙を代筆してあげたハリー=ブロブストなる人物に一昨日の記事で言及したが、この人はペンシルベニア=ダッチだった。ダッチといってもオランダ人ではなく、ドイツからペンシルベニアに移住してきた人々の子孫だ。 …

カロン

ジョン=グラスビーだってアーカムハウスから作品集を刊行してもらっていれば、我が国でもベイジル=コッパー程度には有名になっていたかもしれないなどと一昨日の記事に書いてしまったが、あくまでも知名度で並べるというだけの話だ。作家としてはコッパー…

気まずいヨグ=ソトース

wikipedia:ヨグ=ソトースに少し加筆してみた。 ユーノーに浮気を知られたときのユーピテルのように、ヨグ=ソトースも気まずい思いをするときがあるに違いないとラヴクラフトは1936年9月23日付のコノヴァー宛書簡で述べている。 こんなことを書いたのだが、…

暗黒最終戦争

ジョン=グラスビーという作家が英国にいた。1928年生まれで、インペリアル=ケミカル=インダストリーズに勤める傍ら小説を大量に書いていたという人物だ。The Plains of Nightmareという題名で彼のクトゥルー神話作品集をアーカムハウスから刊行する計…