新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ティームドラ大陸の物語

ブライアン=ラムレイのThe House of Cthulhu は超古代のティームドラ大陸を舞台にした短編集であり、題名からわかるようにクトゥルー神話大系に属している。C.A.スミスが創造したポセイドニスの大魔術師マルグリスにラムレイは献辞を捧げており、彼がテ…

クトゥルー神話におけるツンデレ

クトゥルー神話世界のツンデレキャラといえば、代表的なのはブライアン=ラムレイの幻夢境シリーズに登場する死霊姫ズーラだろう。『ラヴクラフトの幻夢境』でNPCとして紹介されているので御存じの方もいるかもしれないが、彼女は幻夢境の「歓楽かなわぬ…

ランドリーとデルタグリーン

〈ランドリー〉シリーズはなかなか人気が高いらしく、ゲームにもなっている。The Laundry作者: Gareth Hanrahan,Jason Durall,John Snead出版社/メーカー: Cubicle 7 Entertainment Ltd発売日: 2010/07/01メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見る …

禁断の黙示録

〈ランドリー〉シリーズの4冊目に当たるのがThe Apocalypse Codex だ。作者であるチャールズ=ストロスのブログによると、前作のThe Fuller Memorandum から約9カ月後に起きた事件の話だという。*1このシリーズはクトゥルー神話とサイバーパンクを融合させ…

こちらランドリー・クリスマス奇譚

「12月のクトゥルーの季節」という企画が2009年にTor Booksの公式サイトであり、その一環としてチャールズ=ストロスの"Overtime"が公開された。現在も無料で読むことができる。 Overtime | Tor.com "Overtime"は〈ランドリー〉シリーズに属する短編。…

フラー文書を追え

〈ランドリー〉シリーズの3冊目に当たるThe Fuller Memorandum は非常に伝奇色が濃厚な巻である。 〈ランドリー〉は異次元の魔神に対抗するために英国政府が設立した秘密機関、主人公のボブ=ハワードはそこに勤める諜報員だ。1作目の『残虐行為記録保管所…

あなたの頭がおかしいからといって、世界がまともだという保証はない

〈ランドリー〉シリーズの作品は"Equoid"*1など数編がTor Booksの公式サイトで無償公開されており、2008年に発表された"Down on the Farm"もそのひとつだ。 www.tor.com 〈ランドリー〉は異次元の魔神に対抗するために英国政府が設立した秘密機関、主人…

冷戦秘話・ジェニファー計画の真相

スコットランドの作家チャールズ=ストロスにThe Jennifer Morgue という長編がある。早川書房から邦訳が出ている『残虐行為記録保管所』の続編に当たる作品であり、前作に比べてクトゥルー神話色が濃厚だ。2007年度のローカス賞候補になっている。 〈ラ…

小さな緑の偶像、またはダンセイニの失敗

将棋に詰将棋があるように、チェスにはチェスプロブレムがあるが、変則的な動きをするコマを使うものを特にフェアリーチェスプロブレムと呼ぶ。ダンセイニ卿が1943年に発表した掌編仕立てのフェアリーチェスプロブレムをチェス研究家のエドワード=ウィ…

オーゼイユ街にて

ラヴクラフトの「エーリヒ=ツァンの音楽」から派生したクトゥルー神話作品は多いが、フレッド=チャペルにも"In the Rue d'Auseil"という短編がある。この話の主人公は富豪で、楽器を演奏する自動人形(オートマタ)の蒐集に情熱を傾けている。いま彼が手に…

ひとつの時代の終わり

『クトゥルフ神話への招待』には、増田まもる先生による新訳でジョン=W=キャンベルの「遊星からの物体X」が収録されている。作者のキャンベルはアスタウンディング誌の名物編集者であり、黎明期の米SF界における大立者だった。ジョン=W=キャンベルと…

ふたなり神シュブ=ニグラス

新年あけましておめでとうございます。 2015年は未年ということで、羊と縁がある旧支配者はいないかと探してみたところ、シュブ=ニグラスに「千の雌羊を連れし雄羊」なる異称があった。すなわち今年はシュブ=ニグラスの年ということにしておこう。 し…